弓道〜三重十文字と五重十文字〜

弓道~技術面の向上をしよう~

「綺麗な射を目指したい!!」
「的中の出る射を目指したい!!」

どれほど綺麗な射や的中を重視するかは環境によって考え方も様々かと思います。
今回取り上げる三重十文字・五重十文字はどちらを目指す場合にも必要となる基礎ですので、マスターしましょう!!(綺麗に引けば中る、ただの的当て等の意見はここでは置いておきます)
十文字は救急マークと同じで、意識することで確実に上達の助けになってくれます。

三重十文字(胴造りから意識)
①左右の肩を結んだ線(と体の縦の線)
②左右の腰骨を結んだ線(と体の縦の線)
③両足先を結んだ線(と体の縦の線)  3つの十文字

3つの十文字を意識して、胴造りをすれば、左右上下に強い安定した立ち方ができますね!
胴造りで意識が必要ということは、以降の弓構えより後の動作でも継続していく必要があります。
また、左右の①肩②腰③足先を結んだ線が上から見たときに一枚に重なる意識も必要です。

五重十文字
①胸の中筋と両肩の線
②弓と矢
③馬手の親指と弦(取懸け時)
④手の内と弓
⑤首筋と矢

①胸の中筋と両肩の線(胴造りから意識)

胸と胸の中心の線両肩を結んだ線が十文字になるようにしましょう。
身体が斜めになってると十文字になりません。
大三で右側にズレたり、引分けるにつれて的側にズレると、この十文字は崩れます。
胴造り胴造り)を思い出しましょう!!左右均等です!

②弓と矢(取懸けから意識)

矢を番(つが)えたときにが十文字になるようにしましょう。
意識することで、グルグルと螺旋状に飛んだり矢の飛びが悪いときに、真っ直ぐ飛ばすことが出来るようになります!!

③馬手の親指と弦(取懸けから意識)

取懸けをするときに、弽の親指の腹が十文字になるように取懸ける。
弓を引き始めたら弦が真っ直ぐじゃなくなるから十文字じゃなくなる…取懸けのときの形を崩さないように”離れ“までいきましょう!笑
弦枕(弦を引っかけるへこみ)の破損の回避など、弽を大切に使う上でも意識したいポイントです!

④手の内と弓(手の内から意識)

手の内が十文字になるように、会の時に弓に垂直に刺すような形になるような手の内を作りましょう。上に向かって弓を押す手の内、下に向かって弓を押す手の内ではなく、真っ直ぐ押す手の内を作りましょうということですね!
上に向かって押せば矢は上に飛びますし、下に向かって押せば矢は下に飛びます。
微妙な調整を手の内で誤魔化すのも一つの技かも知れませんが、日常的に弓の力を最大限に引き出し、安定した射を目指すには、やはり真っ直ぐですね!!

⑤首筋と矢(物見から意識)

横を向くと首筋が浮き出てきますよね。(斜めだったりしますが)地面に垂直の首筋(水平の)矢が十文字になるようにしましょう。頭、体の位置、矢の角度の意識に役立つポイントですね!!
コツ:左右の肩、左右の拳が水平になるように意識!

今回の内容は、8つとも最終的にはマスターしたい内容なので、まとめはありません。
鏡の前で引いたり、ビデオ等で動画を撮って少しずつ修正していきましょう!!

(「足踏み」「胴造り」「弓構え」「打起し」「引分け」「」「離れ」「残心(身)」)

教本をみてみると十文字の重要性と射法八節のつながりがみえてきます。

 ー前略ー
文字の規矩を正しく守ることにあるが、それは「引分け」を正しく行わなければならない。
「会」において縦横十文字の規矩を堅持し、五重十文字が構成され、天地左右に伸び合うためには要所要所の詰合いが十分でなければならない。したがって詰合い・伸合いが良射を生む絶対的条件である。 

『弓道教本 第一巻射法編〔改定増補〕』財団法人全日本弓道連盟編

 規矩とは考えや行動の規準・手本を意味します。十文字を意識する前提として「足踏み」から「引分け」が完成されていることが必要です。前提と言いますが、最初から完璧な人はいないので、少しずつ整えていきましょうね!
 十文字が「会」→「離れ」で重要ということは、的中に左右されるポイントであることも分かります。最後にでてきた「詰合い」と「伸合い」をみていきます。

ー前略ー
三重十文字には両膝膕(ひかがみ)の働きが大切である。「ひかがみ」は、脚の膝関節の裏側で、両足の安定をはかるためにこれを張ることが大切である。
 
[横線の構成] 両肩を基点として両肘の働き、左右両腕の張合い、すなわち、両腕を貫通している中筋をもって左右均等に張合うことが肝要である。拳や手先の力のみで張合わないように心がけねばならない。
さらに左手(押手)のいわゆる角見と右肘の張合い、同時に胸の中筋より左右に分かれるように(胸を開くように)する。
昔から、これを「詰合い」と称し、「五部の詰」あるいは「四部の離れ」といわれている。

『弓道教本 第一巻射法編〔改定増補〕』財団法人全日本弓道連盟編

 「詰合い」は射形を安定させるための方法・技術であると考えます。弓を引くときに少なからず力が入ると思いますが、左手は押して、右手は引いているように動きも負担にも多少なりとも差があるため、身体の左右上下の力を均等にすることはとっても難しいです。そこで登場するのが、「詰合い」です。
 「詰合い」は身体に張りをもたすことで均等な動きを行いやすくしています。前段の「三重十文字には両膝膕(ひかがみ)の働き」は両膝裏をしっかりと伸ばして”張る”ことで左右の形を同じにして安定感をつくっています。後段の張り合いについても、同じくバランスを保つためのコツと思っていいですね!

「詰合い」が現状のバランスを”維持”する技術である一方で「伸合い」をみましょう。

 伸合い(延合いとも書く)は、絶対不可欠の条件である。伸合いのない射は、結局手先で離すことになる。伸合いは、矢束を引き伸ばすことではなく気力の充実である。
縦横十文字を軸として心を安定させ(平常心)、気力の充実によって気合いの発動をうながし、あたかも風船が破裂するように離れなければならない。これが伸合いである。

 「会」は心理的には不動心の連続であり、的に対する執着心や欲望、雑念を去り、正しい信念にもとづき克己、冷静、忍耐、決断力等の心気の充実につとめるとともに、疑い、不安、弱気、恐怖、卑下感等の陰性を払拭しなければならない。
この修練は、射即人生につながる大切な道である。

『弓道教本 第一巻射法編〔改定増補〕』財団法人全日本弓道連盟編

 「伸合い」は絶対に必要だよ!と断言されていますが、文章が難しいですね。前段では、「詰合い」だけでは現状を保っているのみになります。「会」は”無限の引分け”と表現されます。現状のキープだけでなく、さらに動きが必要になるということです、現状を維持しているだけの「会」では「離れ」のときに”緩み”がでてしまい、ここまで作り上げてきた射法八節が台無しになってしまいます。そこで、左右上下にしっかりと伸び続けることが大切なんですよ!ということですね!「離れ」のときに「ハッ」っと声を出すと意外とこれが出来たりします。是非やってみてくださいね!

 後段では、弓を引くときに他のことを意識してしまうと、集中できなくなるので、雑念をすてて集中する必要があるということです。この真っすぐな精神が日常生活という人生をも充実させてくれるということですね!弓道を通して人生が豊かになる、本気の趣味が日常にも役に立つということを教えてくれています。武道って感じで侍魂が湧きたちますね!!

 「詰合い」も「伸合い」も外からは分かりにくい内部的なことですが、重要なテクニックであることが分かりましたね!射法八節を見直して、十文字を整えることで「詰合い」と「伸合い」につながり、結果として的中に大きな影響を与えることができる!的中を出すための第一歩ともいえるかもしれません!!

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